2025.09.03
つながりの中で重ねてゆく時間
ブログ過去数十年のあいだに、世界のほとんどの国で平均寿命は確実に伸びてきました。その背景には、公衆衛生の向上や医療技術の進歩、安定した食料供給と栄養状態の改善、そして教育の広がりなど、いくつもの要因が重なっています。
けれども今、ただ長く生きること以上に、どうすれば心身ともに健やかに年を重ねられるのかという視点が注目されるようになり、「サクセスフル・エイジング」という考え方が広がってきました。
この言葉は1987年、医学者ジョン・ローと社会科学者ロバート・カーンが『サイエンス』誌に寄稿した短い論文から始まったとされています。その核にあるのは、病気や障害を最小限に抑え、高い身体機能や認知機能を保ち、社会との関わりや生きがいを持ち続けること。
けれども同時に、加齢による変化を受け入れながら残された力を活かし、自分なりの満足や価値を見出して生きていく姿勢も大切だと、多くの研究者が指摘しています。心理学や社会学、医学といった分野での細やかなモデルに違いはあっても、共通しているのは「心と体の健康、人とのつながり、自分らしい意味を持って暮らすこと」へのまなざしです。
寿命が延びた今だからこそ、どのようにその時間を重ねていくのかが問われるのかもしれません。まだ若いと思っていても、やがて誰もが迎える老年期。日々の暮らしの中で、そのときの自分を思い描きながら過ごすことが、きっと未来の自分を支えてくれるのでしょう。
そんなことを考えていた折に、息子からLINEがありました。お付き合いしている彼女のお父様の誕生日会に招かれ、親戚一同で祝ったというのです。
送られてきた写真には、アイリッシュパブを貸し切りにして、20人を超える人々が集い、楽しそうに笑い合う姿が映っていました。彼女の家族は節目ごとに大勢が集まり、賑やかに語り合うのが常だそうで、その温かさが写真越しにも伝わってきました。
ふと我が家のことを思い返すと、父はコロナ前に他界し、韓国に暮らしていた伯父伯母や仙台にいた叔父叔母もすでに亡くなっていて、気づけば親戚の輪は小さくなっていることを実感します。
かつて韓国を訪ねるたび、親戚の家々を回って挨拶をするのが少し負担に感じられたこともありました。それでも今思えば、大勢で集まって語り合い、笑い合う時間は何よりも貴重で、かけがえのないものだったのですよね。
人とのつながりを大切にしながら年を重ねていくこと、その意味を改めて胸に刻む出来事となりました。



