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2025.08.24

静けさに宿る日本の美意識

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散歩の途中、シェリとティノと一緒に小さな公園を通りかかると、一人の年配の男性が黙々とゴミを拾っていました。帰り道、同じ場所を通ると、その方はまだ道路脇に腰をかがめて一つ一つ拾い集めていて、その姿に胸を打たれました。

誰に見せるためでもなく、ただ静かに街を整えている背中には、日本の美しい習慣が宿っているように思えます。日本の公衆トイレが綺麗に保たれているのも、その延長線上にあるのかもしれません。

世界的に注目された映画『PERFECT DAYS』では、渋谷の「THE TOKYO TOILET」プロジェクトを舞台に、役所広司さんがトイレ清掃員を演じ、カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞しました。

淡々と日々の仕事に向き合う姿が描かれるその作品には、どこか先ほどの男性と同じ静かな気配を感じます。海外では公共トイレが荒れ果てている話をよく耳にしますが、日本では誰かの目に触れないところでさえ、丁寧に手が加えられている。それは単なる清掃以上に、他者や社会への思いやりの表れなのだと思います。

思いやりを表す日本の言葉には、「つまらないものですが」という一節もあります。贈り物を手渡すときのこの言葉は、実際につまらないという意味ではなく、「あなたに比べれば何ほどのものでもありません」という深い敬意を込めた表現。相手を立て、自分を一歩引かせるその姿勢には、奥ゆかしさと美意識がにじんでいます。

さらに、通夜や葬儀で香典の表書きを薄墨で記す習慣もまた、日本らしい心の表れだと感じます。墨が淡くにじむのは、悲しみの涙に滲んだ気持ちを重ねているからだと聞いたとき、とても感動しました。直接語らずとも、そっと思いを託す。こうした静かな所作に、日本の文化が持つ深い余情が宿っているのでしょう。

千年以上も受け継がれてきた調和を重んじる心は、日々のささやかな場面の中に息づいています。ふとした出会いからその美しさを思い出すたび、私もまた、この国に根付いた静かな意識を大切にして生きていきたいと感じます。


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