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2026.03.18

失うことで見えてくるもの

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「しあわせな選択」という韓国映画を観てきました。出演は、イ・ビョンホン、ソン・イェジン、パク・ヒスンと、主役から脇役に至るまで実力派が揃っていて、物語の細部にまで自然と引き込まれていきました。

製紙会社で25年、堅実に働いてきたマンスは、妻と2人の子ども、そして2匹の犬とともに、郊外の大きな家で“理想的”とも言える人生を送っていました。けれど、その安定はあまりにも突然に崩れます。会社からの解雇――長い時間をかけて築いてきたものが、一瞬で足元から崩れ落ちてしまう出来事でした。

再就職を目指して動き出すものの、思うようにはいかない現実。その中で彼の頭に浮かんだのは、「ライバルがいなくなれば、自分が選ばれる」という、あまりにも極端で危うい発想でした。自分より優秀だと思われる人物を排除するという選択に踏み込んでいく物語は、どこか現実から逸脱しているようでいて、同時に、追い詰められた人間の心理としては完全には否定しきれない生々しさも感じさせます。

作品にはコメディのような軽やかさも織り交ぜられていて、重くなりすぎずに物語が進んでいくのですが、その奥には、再就職に苦しみ、少しずつ追い込まれていく主人公の葛藤が確かに流れています。俳優たちの表現が見事で、その揺らぎが静かに伝わってきました。

ただ、この映画がどのように響くかは、本当に人それぞれかもしれません。実際、隣に座っていた女性は、途中から静かな寝息を立てていました。もしかすると、作品よりも日常の疲れのほうが、強くその人を包んでいたのかもしれません。そんな光景さえ、この映画のテーマとどこか重なって見えるのが不思議です。

印象的だったのは、未来の描かれ方でした。AIが人に代わって仕事を担い、人の存在が少しずつ必要とされなくなっていく世界。かつては人と人が関わり合いながら働いていた場所が、やがて静まり返り、広い工場の中で主人公が一人、機械と向き合っている――その対比が、強く胸に残りました。

「しあわせな選択」というタイトルは、どこか皮肉のようでもあり、それでもなお、問いかけのようにも感じられます。人は何をもって“しあわせ”と呼ぶのか。安定なのか、役割なのか、それとも、誰かと共にいる感覚なのか。

答えは簡単には見つからないままですが、観終わったあと、自分の中に静かに問いだけが残る。その余韻こそが、この作品のいちばん深いところなのかもしれません。


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